ドイツ語

Guten Tag!

はじめに・履修者へのメッセージ

Message

 私たちが生きている時代は、ひとことで「近代」と呼ばれる時代です。とにかくあれもこれもと問題が山積ですけれど、その問題とは、つまるところ「近代」の問題です(もう少し詳しく言えば、「市民社会である西欧近代文明」です)。
 その思想や感性が、知らず知らずのうちに私たちに浸透しています。私たちはそれを母乳にして育っているので、いちいち意識したりもしません。
 その近代に書かれた大事な本のほとんどは、三か国語のうちのどれかで書かれました。英語、フランス語、そしてドイツ語です。
 ですので、本当は、大学では英語のほかにはフランス語かドイツ語か、あるいは両方を勉強しなくてはならないと思うのです。なぜなら、実際、大昔の日本の大学に通うエリートはそうでした。日本人の伝統的な教養として漢詩を引用し、外来の文化としてフランス詩を口ずさみ、外来の思想としてドイツ哲学を会話に混ぜていたのです。そんな人は今の日本にはからっきしいなくなってしまいました。お金の話ばっかり。どうすれば得するという情報ばっかり。ああ、いやだ。
 いやいや待てよ、世界にはいろいろな言葉や文化が存在しているよ。それを勉強するのも意味があるのではないか。そう言いたい人もいるでしょう。もちろん、その通りです。だから、現在の慶應法学部ではいろいろな外国語や文化を学べるようになりました。たいへんよいことです。すばらしい。バンザイ。どんどん勉強しましょう。授業料は定額で、学び放題プランになっています。みんなが大好きなお得な情報です。活用しましょう。
 だけどね・・・ちょっと声を落として本音を言うと。
 だって、大学生なのだから、ドイツ語くらい勉強したほうがいいよ。やればわかる。やらないとわからない。世の中、そういうものです。
 現代や未来について考えるなら、それがどうやってできてきたかを知らないとダメなんじゃないですか。マルクスとかヘーゲルとかニーチェの原文を読むと最初はちんぷんかんぶんですが、ああ、こういうところから、またこういうふうにして近代はできあがっていったのだなあと実感がわきます。時間が、歴史が、こういう文章の中には息づいていると思わされます。翻訳ではわかりません。
 あなたはきっと「恋愛」がしたいのではないですか。その「恋愛」なるものは「近代」が生み出したものだと知っていたほうがいいとは思いませんか。

法学部におけるドイツ語について

 今の自分が何なのか、社会が何なのかを知るためには、ドイツ語でいわゆる名著と呼ばれるものを読むべきだとはすでに書きました。
 でも、過去だけ知っていても仕方がないことも事実です。世界は刻々と変わっていきます。ドイツは、世界という視点から眺めても、存在感がある国なので、そこで今何が起きているかは、現代の知的な人間ならある程度知っていたほうがいい。環境問題、エネルギー問題、それに国際政治、経済・・・。日本の視点、アメリカの視点、ヨーロッパとひとことで言ってもフランスやイギリスとは異なる視点、それもまたこれからの、おそらくはそうは平穏ではない世界を生きていかねばならないあなたにとっては大事な情報でしょう。またピンとこないでしょうが、就職してダイレクトに社会と関わるようになったとき、痛感すると思いますよ。

 と同時に、矛盾するようですが、社会とダイレクトに関わりたくないがゆえに、そして哀しき「現在」を忘れるために、過去の文学に逃避するという方向もあります。赤紙=召集令状を受け取った旧制高校の生徒たちが、ポケットにこっそりしのばせていたのは、古いドイツの詩集だったりしたのです。
 あるいは、破滅的で悲痛な小説、壮麗で美しいクラシック音楽、大胆で独創的な20世紀美術、モダニズムの現代建築・・・ドイツ語はそういうものをよく知るための助けにもなります。

コース紹介

Courses

勉強においては、つまるところ、やる気が一番大事です。コースがどちらでも、また何語を選んでも、やる気がなければどうしようもありません。シンプルにして残酷な真実です。勉強したくない人、楽な授業を選んで楽に卒業したい人は、大学に来なくていいよ。それが大学教員の本音です。また、誤解している人が多いのですが、学ぶことが好きなことと、よい点を取るのが好きなことは、まったく別のことです。
語学力は筋トレみたいなもので、量を増やせばますます鍛錬されますが、やめたとたんに衰えていきます。プロになるのでなければ、週にひとつでもいいから、だらだらでいいから、長くやるのがいい。細く長くで大いに結構。気づいたら、あ、意外とできるようになっているぞ、というのでいい。

レギュラーコース

 週に2回授業があります。1年生では文法を一通りやります。2年生では、自分で授業を選べます。文学作品が読みたい人はそういう授業、会話がやりたい人はそういう授業、時事ネタが読みたい人はそういう授業・・・好きにしてください。好きにできるのが売りなので。
 三田でも勉強したい人は、やれます。

インテンシブコース

 週に4つも授業があります。レギュラーコースの倍です。1年生は、そのうち3回が文法、1回がネイティヴの先生による会話です。2年生になっても、週4つは変わりませんが、ネイティヴな授業が増えます。回数が多いので、当然、レギュラーより負担は増えます。しかし、力はつきます。
 3年生からあとも三田で授業があります。自分の都合で選んでください。
 しゃべったり、書いたり、ドイツ語で積極的に何か主張したい人はこちらのコースをどうぞ。

検定試験について

 英語と同じように、いくつもの検定試験があります。テストがやりがいにつながる人はどんどん受けましょう。また、留学を考えている人も受ける必要があります。
 検定試験の特徴や詳細については、入学後に教員に相談してください。

ドイツ語の特徴

Special features of German

 ドイツ語は英語の親戚です。単語も文法も英語に似ている部分がずいぶんあります。でも、英語より細かい。そこがおもしろい。ノリだけではすまないので。ドイツ語ができるようになると、英語が簡単に思えてくるという事実は間違いなくあります。
 外国語はブロークンでも通じればいいじゃないかという考え方もあって、それが必ずしも間違っているわけではないけれど、大学で教えているのは、知的な人にふさわしい外国語能力なので、気合で通じればいいだろう、ではすみません。
 ドイツ語を履修する学生はまじめなタイプが多いです。だから、教員は比較的幸せです。もっとまじめだと、もっと幸せですが。
 それと、言葉は、言葉だけ学んでも本当のところはわからない、というか全然わからないものなので、文化なども意識しないといけません。

教員紹介

Faculty

各言語と授業を知ろう

Features of each language and the language classes