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| 慶應義塾大学法学部で外国語を学ぶ

教員紹介

Faculty


  • 橘 宏亮
    橘 宏亮

     1800年頃、いわゆるゲーテ時代のドイツ文学・文化について研究しています。

     初めてドイツ語を学んだのは高校生のときです。クラシック音楽が好きでワーグナーなどのオペラも聴いていましたので、高校が提供していた第二外国語で選択しました。大学は法学部に進学し、自然な成り行きで引き続きドイツ語を選択したところ、1年初級授業の担当が、音楽評論などで以前から名前を知っている先生でした。これは全くの偶然です。相変わらずクラシック音楽も好きだったので、がぜんやる気が出た私は、その授業の成績は良好、先生からもすごく褒められて得意になり、自分にはドイツ語の才能があるのだ、と思い込んでしまったのです(今考えてみればこれは完全に思い込みでした)。それ以来、大学での他の学びも、ドイツ語やドイツ語圏文化を中心に考えるようになりました。ゼミもドイツ系の憲法ゼミでしたし、ドイツ語で書かれた法学文献を読むという授業もとっていました。ドイツの文学や哲学の本を真剣に読むようになったのもこの頃です。

     その後、ドイツとは関係のない企業に就職しましたが、いつかはドイツ語圏に関わる仕事がしたいな、とは考えていたように思います。そんなあるとき――忘れもしない、休暇でドイツに行く飛行機の中、旅の目的はベルリン・フィルのコンサートでした――時間つぶしにと手に取ったハインリヒ・フォン・クライストの短編小説集に衝撃を受けます。ぜひともクライストの研究がしたいと一念発起して退職、大学院文学研究科に入りました。その後、博士課程はドイツのヴュルツブルクに留学して、クライストについての博士論文も書き、文学研究者として現在に至っています。

     こう書いてみると、私のドイツ語遍歴も成り行きでしかなかったのだな、という印象ですが、それでも一つ言えることがあるとすれば、結局、外国語学習はモチベーションが大事だということでしょう。自分には関心があって、それについてより深く学びたい。そのためにはドイツ語が必要だからドイツ語を一生懸命学ぶ。そういうことです。私の場合、それはクラシック音楽でありクライストだったわけです。やりたいという情熱があれば、多少文法が複雑でも苦にはならないものです。その意味でも学生さんたちには、まずは、新しい言語を使って何がしたいのかを見つけていただきたいと思っています。

     ちなみに、私が専門としている古い文学も、法律や政治と大いに関係があります。1800年頃のヨーロッパはいわば過渡期であって、古い中世的・封建的な秩序や考え方が近代的なものへと移行していった時代でした(フランス革命を思い出していただければすぐに理解できるでしょう)。この頃に強調されるようになった概念で、現代のわれわれの考え方を規定し続けているものは数多くあります。例えば人権などもそうです。しかし、現代の日本では自明のものとなってしまっているように思われるこの人権という概念も、当時の人々にとっては全く新しいものでした。そこで彼らは自由とか権利とかいったものを徹底的に考え抜く必要に迫られたわけです。ゲーテやクライストもそうした人々の中の一人でした。だから、これらの考察を記録した同時代のテキストを読むことはわれわれ現代人の考え方を、もう一度、徹底的に見直すきっかけを与えてくれるのです。そうだとすれば、法学部で法律や政治を学ぶ学生さんたちがこうしたテキストを読む意味は大いにあるといえるでしょう。

各言語と授業を知ろう

Features of each language and the language classes